2025/03/04 12:44
ここでは当店の透明標本(=2重染色法による透明骨格標本)の作製方法ではなく、一般的な作製方法を記しますが、薬品の入手が難しいもの、また劇物や危険物などが含まれているため、下記の方法での作製を推奨するものではありません。もし作製するのであれば薬品の取り扱いに充分に慣れた者の管理下で行い、作製環境(換気やゴム手袋、マスク・ゴーグルなど)を十分に整えてから行うようにお願いいたします。
また標本となる試料(生き物)の大きさや、含まれている脂質の量、作業環境温度により各工程の時間は変わってきます。あくまでも目安として捉えてください。
当店では一般の方でも比較的に簡単に作製できるよう当店オリジナルの“透明標本作製キット”を販売しております。もし作製されたい方はこちらをご利用ください。
◆透明標本の作り方
【使用薬品など】
・ホルマリン
・無水エタノール
・アルシアンブルー
・氷酢酸
・アリザリンレッドS
・水酸化カリウム
・グリセリン
・抱水クロラール
・チモール
・蒸留水
・(トリプシン )
・(四ホウ酸ナトリウム)

【材料】
・試料となる生物
・タッパなどの容器
・標本瓶
・ピンセットやハサミ、スプーン
・ゴム手袋、マスクなどの防護用品

【作り方の流れ】
①固定
↓
②下処理
↓
③脱水
↓
④軟骨染色
↓
⑤脱色
↓
⑥透明化
↓
⑦硬骨染色
↓
⑧脱色
↓
⑨浸透
↓
⑩封入
①固定
・ホルマリン水溶液に試料をつける。(3〜7日間)

ホルマリンまたはエタノールにつけることにより脱色していく。
②下処理
・流水でホルマリンを抜く。(1〜3日)
・ウロコや皮をはぎ、内臓を取り除く。

ウロコをはぐ時は、尾ビレから頭部向かってヘラ等ではぐとウロコが取れやすい。またこの時に試料の眼を針などで刺しておくと眼に薬品が浸透しやすくなる。
③脱水
・50%エタノールにつける。(1日)
・無水エタノールにつける。(1日)
※50%エタノールは、無水エタノール:蒸留水または精製水=1:1の混合液

④軟骨染色
・軟骨染色液を作成する。
軟骨染色液(100ml)=氷酢酸20ml,エタノール80ml,アルシアンブルー10mg(粉)または1ml(液)
・試料を液につける。(2〜12時間)

軟骨染色液は強酸性の液体で長く浸けすぎると脱灰し、硬骨が染まりにくくなるため、長時間浸けないようにする。小さな試料であれば数時間程度で問題ない。
⑤脱色
・80%エタノールにつける。(1日)
・50%エタノールにつける。(1日)
※次の透明化の過程でトリプシンを使う場合は、50%エタノールにつけた後に、四ホウ酸ナトリウム飽和水溶液に1〜2日間つける。

⑥透明化
・2〜4%水酸化カリウム水溶液またはトリプシン水溶液に中軸骨格(背骨や肋骨)が見えてくるまでつける。(数日〜数週間)
※トリプシン水溶液を使用する場合は、100ml作成する場合、四ホウ酸ナトリウム飽和水溶液30ml、蒸留水70ml、トリプシン1gを加える

この過程がこの標本作製において一番時間のかかるところである。この過程で徐々に標本が透明になっていく。室温や試料の脂質量により透明になるまでの時間はまちまちなので、こまめにチェックをすると良い。溶液にあまり長くつけすぎると標本が崩れてくる。また溶液が黄ばんできたら交換する。
※トリプシン水溶液で作製する場合は35℃前後にすると反応が早くなる。

水酸化カリウム水溶液に浸けて、約10日後の様子。全体的に透明感がでてきて、背骨や肋骨が見えてきた。このタイミングで次の工程に移る。
⑦硬骨染色液
・硬骨染色液を作製する。
硬骨染色液(15 ml)=氷酢酸1ml,グリセリン2ml,1%抱水クロラール12ml,アリザリンレッドS 10mg
(氷酢酸:グリセリン:1%抱水クロラール=1:2:12の割合で混合する。)
・ 1%水酸化カリウム水溶液に硬骨染色液を適量入れ、試料をつける。(1日)

⑧脱色
・1%水酸化カリウムにつける。(1〜3日間)


・1%水酸化カリウムとグリセリンを3:1の割合で混合した溶液につける。(1〜3日)
・1%水酸化カリウムとグリセリンを1:1の割合で混合した溶液につける。(1〜3日)
・1%水酸化カリウムとグリセリンを1:3の割合で混合した溶液につける。(1〜3日)

この工程で試料の水分とグリセリンが入れ替わり透明度が増してくる。
⑩封入
・標本瓶に試料とグリセリンをいれ、チモールを適量入れ完成。

通常、作製開始してから完成するまでに約2〜4週間程度かかる。サイズが大きいものや深海魚などで脂質量が多いものは数ヶ月かかる場合もある。市販されている透明標本が高価なのは、使用する薬品の価格が高いという理由もあるが、一つの作品を作製するのに長期間かかり、鱗や内臓を丁寧に取り除くなど、細かな作業が多いことも理由の一つである。また作製過程で標本が崩れてしまうことも多々あるので、すべてがうまく作れるというわけではないということも理由の一つなのではないだろうか。
